IKEAだけが気付けたイノベーション

マーケティングコラム

IKEA(スウェーデンの家具メーカー)の
「This Ables」という素晴らしい取り組みを
ご存じですか?

↓「This Ables」プロジェクトの動画↓
https://www.youtube.com/watch?v=a0PA_VpLlDw&t=7s

障がい者の人たちは、家具を選ぶ時に
どうしてもデザインより使い勝手を優先しがち。
しかも、障がい者用の特別なものとなると
値段も高くなってしまう。

お手頃価格でカッコイイIKEAの家具が欲しくても
使いにくいから買えない。

そこを何とかできないかと考えついたのが
このプロジェクトなんです。

例えば、ソファが低すぎて立ち上がれない人には
ソファの足に取り付けて高くできるパーツを、
不随意運動のためにスイッチが押せない人には
スイッチに被せて押せる範囲を大きくするパーツ、
これらを、3Dプリンタで作れるようにしたのです。

それだけではありません。
その3Dプリンタ用のデータを
全世界に無料で配布しているのです。

すごいですよね。

3Dプリンタですから、1個から作ることができます。
IKEAとしても、パーツの在庫を抱えることもない。
しかも、自社の色んな家具に合わせて
データさえ作っておけばいいのです。
ユーザーが自分で作るのですから。

一見福祉的な価値に見えますが、そうではありません。
世界中の障がい者の方がユーザーに加われば
当然IKEAの売上は上がっていきます。
IKEAと障がい者の両方が嬉しいのです。

【ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す】
【ニュータイプの時代】
などの著書で知られる山口周氏はこう語っています。

IKEAは「ありたい姿」を思い描いたからこそ
障がい者の課題に気付き、解決策を思いついた。

障がい者は世界中にいるわけで、
気に入った家具が使えないと言う問題は
世界中にあった。

日本でも同じ状況なので、
このアイディアは、ニトリや大塚家具がやっても
おかしくないことだったのに、
IKEAしか思いつかなかったのはなぜか。

「障がい者は障がい者用の家具で我慢しとけ」
という状況に疑問も持たなかった日本のメーカー。

そんな中、
「みんな、自分が気に入っている家具に囲まれて
暮らしている、そんな社会がいい社会だと思う」
という、ありたい姿を思い描けた人たちが
イノベーションを起こしたのだ。

しかも、思いついた人たちはきっとわくわくしただろう。
だからこそ、一気に世界に広まったのだ、と。

イノベーションは「解決案」ばかり考えていても起きない。
こんな社会がステキという「ありたい姿」から
現状を差し引いた部分に課題があって、
それを「問い」として解決策を考える。

100年前にケインズも
同じようなことを語っているそうです。
「アニマル・スピリット」(つまり、わくわく)で
大きなプロジェクトが次々と実現した。

「これをやったらどれくらい儲かりそうで
どれくらいの利益が出そうか」という計算では
世の中は動いていない、とも。

数年前から「この人いいなー」と注目している山口周氏。
彼の言う「ニュータイプの時代」は、
人間性を取り戻す社会に向かっているようで
ちょっと嬉しくなります。

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